2019年2月17日(日)、第14回おきなわ文学賞の表彰式がありました。
わたくし、シナリオ・戯曲部門にて一席(沖縄県知事賞)および佳作を受賞しまして、受賞者を代表してスピーチを偉そうにしてまいりました。
複数名から、「スピーチを聞かせろ!」と強要がありましたので、全文をここに掲載します(音声はありません)。
この度、シナリオ・戯曲部門一席を受賞しました、兼島拓也と申します。
今回、図々しくも2作品を出品しまして、一つは県知事賞、ひとつは佳作と、2作とも同時に受賞することができました。
このような結果を得ることができて、非常に嬉しい気持ちです。選んでいただき、誠にありがとうございます。
ホームページに掲載されていた審査員の富田めぐみさんの講評に、こういう言葉がありました。
「メタファーに富んだ物語だからこそ伝えられる現実がある、刺さる問いかけがある」。
僕ら書き手は、メタファーという武器を手に、フィクションを作り出します。
沖縄の人間が沖縄について物語るとき、「基地」というテーマから自由になることはできません。否が応でも、その影に追われています。
しかしそこには、複雑な立場があり、相対する意見があり、それを語るのは非常に困難なものです。
だからこそ、わたしたちは「メタファー」を用いて、問題のコアな部分に迫ろうとします。「現実」を描き出そうと、フィクションを作るのです。
そうやって作り上げたのが、今回受賞した作品です。
しかし、とはいえ、このようにして作られたフィクションには、どのような意味や役目があるのでしょうか。
作り手はこのことに、良くも悪くも向き合わなければなりません。
いまわたしたちの目の前にあって、わたしたちの認識をかたちづくっている「現実」、あるいは「世界」、そういったものに「裂け目」を入れるのが、フィクションの役目だと思っています。
その裂け目から、それまでとは異なる相貌の「現実」や「世界」が顔を出し、読者や観客がそれらと対峙することを、フィクションは要求します。
それはある意味では暴力的なことでもあり、そのことを常に自覚しながら、これからもフィクションを作っていきたいと思います。
今月24日には、辺野古新基地建設についての県民投票があります。その結果によってこれまでの沖縄の物語が書き換えられるのか、それともこれまでの物語が強化されるだけになるのか、僕にはわかりません。
でも、物語を自分たちの手で書き上げる力を、そのポテンシャルを、沖縄の人間は持っているんだということを、僕は信じています。
ときどきわたしたちを呑み込もうとする「現実」や「世界」に、メタファーやフィクションを武器に立ち向かうこと。今回の受賞は、そのことを決心させてくれました。この賞に恥じぬよう、これからも活動していく想いでいます。
最後に、あらためて、今回の受賞心から光栄に思っております。本当にありがとうございました。