儚い

トイレで用を足す時にさ、パンツ下ろしていて良かったって思うんだよね。
下ろしていなかったら、凄く嫌だと思うから。

今にも壊れそうな扉の内側で、息を潜め、ただただ誰にも見つかりません様にと。一秒一秒がまるで永遠の様。私はただただ何も起きません様にと祈っていました。嵐が過ぎ去るのを待っていると静寂を切り裂く大きな音。それはまさに耳の内側でジャンボジェットが飛んでいるような衝撃。壊れかけの私の扉に張り手を打ち始める力士。やめてくれ、やめてくれ。私は声にならない声で叫びながら、必死で扉を内側から押さえるのです。それでも力士の張り手は止まりません。もうだめだ、このまま壊されてしまうのか。そう思った次の瞬間、力士はどこかへ行ってしまいました。突然訪れた静寂。さっきまでの出来事は、まるで悪い夢でも見ていたかのよう。私は喜ぶよりも、大きな疲労感に一息つきます。良かった、嵐は過ぎ去ったのだ。その瞬間私は膝の力が抜け、その場に座り込んでしまいました。極限からの安堵。自分がまだ生きていることをゆっくり実感し、喜びすら覚えたその瞬間、ドンドンドンドンっ!!力士がまた襲ってきました!やめろ、やめてくれ。しかしもう、私に耐える力など残っていませんでした。

ぶりっ、ぶりぶりぶりっ、ちゅどーん!!扉は壊され、パンツは汚されました。直視できないほどの現実がそこにはあります。パンツの内側でこんな凄惨な事件が起こるなんて。こんな嫌な思いをするくらいなら、パンツなんていらない!パンツなんて履かない!

今日も、パンツを下ろしていて良かったと、心から思うのでした。
ありがとう。

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