どうなのよ、クライマックスシリーズって。
~少数の法則~

プロ野球のクライマックスシリーズも、
だんだん盛り上がりを見せてまいりました。
両リーグとも、どのチームが日本シリーズに出場するか
いまからワクワク楽しみであります。

さて、試合まではまだ日がありますので、
今日も必死に勉強して、当日は勝利をもぎ取りたいと思います。

※ちなみに、対戦相手はまだ見つかっておりません。

今日は「少数の法則」というものを考えていきたいと思います。

たとえば。
「3割バッター」という言葉があります。

「3割バッターなら、残りの7割は何? ピッチャー?」
なんてことは言わないでください。
そういうことではありません。
「人の身体の6割は水です」みたいなやつとは違います。
「人は見た目が9割」みたいなのとも違います。

野球の、「打率」のはなしです。

よく野球では、「3割を打てば一流」※1だなんて言います。
だから
「10回のウチ3回の成功でOKだよ!」※2
というような励ましの言葉を口にする人もいます。
(野球に限らず、仕事やプライベートにおいても)

ただ、※1と※2は、若干意味が違うんですよね。

「率」においては同じ意味ですが、「数」が違います。
10打数3安打と、1000打数300安打では、
おなじ3割であっても、
その打率の信頼性が全く違うのです。
これは至極当然のようなはなしですが、
私たちの脳は、この「率」を見誤ってしまう事が多々あります。

ゲイツ財団は、
ある教育事業に対して巨額な投資を行ったそうです。
その事業とは、「小さな学校」をつくること。
なぜ、小さな学校?
それは、
「成績上位校には小さい学校が多かった」、
というデータがあるからです。

小規模な学校の方が、個別的な対応を実施することができる。
生徒一人ひとりに目が行き届くので、勉学意欲も高めやすい。
よって良い教育を提供でき、生徒の成績は上がる。
だから、小さい学校をたくさんつくるのだ。

これが、ゲイツ財団のねらいです。

でも、どうやらこれは的外れのようです。
なぜなら、小さい学校の成績が良いのには、
その学校の教育プログラムよりも、
生徒の「数」の方が影響が大きいのです。

もし、成績が下位の学校について調べてみても、おそらく
「成績下位校には小さい学校が多かった」
となるわけです。

これはどういうことか。
つまり標本となる「数」が少ない場合、
より極端なケースが出やすい、ということです。

例えば、全国平均80点の統一テストがあるとします。

ある学校は全校生徒100人で、
99人が80点(平均点)、1人だけ100点、という場合。
この場合、学校全体の平均点は80.2点です。

では、全校生徒10人で、
9人が80点、1人だけ100点。
この場合の平均点は、82点です。

これはわざと極端にしたケースですが、
標本数が少ないと
ばらつきが大きくなりやすく、
全体の結果に、個々人の成績が反映されやすいのです。

数年前、プロ野球で
パリーグのペナントレースを3位で終えた千葉ロッテが、
クライマックスシリーズ、日本シリーズと快進撃を見せて、
見事日本一になりました。
「史上最大の下克上」などと呼ばれましたが、
短期決戦となると、
力の劣るチームが頂点に立つ、いわゆる下克上が
通常のリーグ戦よりも起こりやすくなります。

とすると、クライマックスシリーズの意義というのも
考えなければならないような気がします。
実際にこのシステムがはじまった際は異論が噴出しました。

極端なはなし、
クイズ番組で、「最後の問題は、100万ポイント!」という
クレイジーなルールと同質のものとさえいえるわけです。

ただ、ファンとしてはその「下克上」の面白さもあるわけで、
なんとも言えない問題です。

だいぶ話が長くなりましたが、
少ないサンプルによる結果を
大きなサンプル数のものと同等に扱ってしまうことを、
「大数の法則」に対して、皮肉の意味で「少数の法則」と
呼ぶようです。

この「少数の法則」が、
僕たちチョコ泥棒野球部に何を教えてくれるのか。

それは、たとえ負けたとしても
「1試合しかしてないからね」
と、堂々と言える、ということです。

そうなのです。
だって、サンプル数1試合だけですもの。
負け惜しみでも屁理屈でもありません。
統計的思考で考えると、
まだ僕らが弱いと決まったわけではありませんよね?
たかが1試合に負けたくらいで、ね。

大事なのは、トータルの勝負でしょ?

参考文献:ダニエル・カーネマン『ファスト&スロー(上)』(2012),早川書房

2014-09-18チョコ泥棒野球部、始動。
2014-10-12対戦相手と、あと、審判も募集します。
2014-10-15どうなのよ、クライマックスシリーズって。
~少数の法則~
2014-10-25試合終了〜!